2017-08-28

ボーイング767、red-eye、そして健康。

 以前にも書いたかもしれませんが、ボーイング767は近い未来に退役することが決まっている機体で、来年には劇的に運航機材数が減らされるそうです。 一緒に飛ぶ機長に聞く話では、以前は767はそれこそまさに世界中を飛んでいたそうです。 中東に南米、ヨーロッパにアジア。 それが今ではそれらの路線はもっと多くの乗客を運べ、しかも燃費性能の良いボーイング787やボーイング777に取って代わられました。 僕が乗務する767は今では主に北米路線を飛び、海外便としてはイギリス・ロンドン、ドイツ・フランクフルト、あとは日本・成田便などを主に飛んでいます。 

 リザーブパイロットで、しかももっともセニオリティが低い僕が行かされる(行かせてもらえる?)のは主に国内線です。 特に多いのがトロントーバンクーバー便。 あとは時たまアメリカ・ロサンゼルスとサンフランシスコというのもあります。 でも、圧倒的にバンクーバー便が多いです(笑)。  
 
 先日、ちょっとバンクーバーで行きたいところがあったので、4連休の3日目だったのですがクルースケジューラーに「休日出勤オッケーです」というリクエストを送りました。 そうしたら結構早く電話がかかってきて、「バンクーバー便あるけど、行く?」って聞かれ、はいはい行きますと返事をしました。 休日出勤をするとお給料が割増になるという特典があります。 しかも、バンクーバーでやりたいことができるだけのレイオーバー時間もあり、一石二鳥でした。 お休みも1日だけは振替てもらうこともできたので、一石三鳥という感じです。 

 トロントからバンクーバーへのフライトは行き(西へのフライト)は約5時間。 帰り(東へのフライト)は4時間ちょっとという感じです。 ルートは天気や乱気流の報告などを元にディスパッチャーが精査して決定します。 ずっとカナダ国内を飛ぶこともあれば、ほとんどアメリカを飛ぶこともあります。 前回の帰りのルートはこんな感じでした↓


 よく見るとアメリカとカナダの国境に黒い細線が見えます。 このルートはバンクーバーを離陸後、ほんのちょっとはカナダ国内を飛びましたが、それからオンタリオ州にたどり着くまではずっとアメリカ国内を飛んでいました。 ですので、航空無線で話すのもソルトレイクシティー、ミネアポリス、クリーブランドなど、ほとんどがアメリカのATCです。 カナダ国内ではCPDLC(Controller Pilot Data Link Communication)というデータリンクを使用するので、無線で話をする数も減りますが、アメリカではCPDLCを使えません。 このCPDLCを利用すると、どこかの航空管制とコンタクトをしないといけない場合には「ポーン♪」というチャイム音がコクピット内に鳴り、「Contact Edmonton Center on 120.50」という風に文字で指示が送られてきます。 これをボタンを押して「Accept(承諾)」し、ラジオを使って話をするという流れです。 これは結構便利で、大西洋を渡るときにはVHF無線が使えないので、CPDLCを使います。

 僕がよく乗務するトロント発バンクーバー行きはトロントの夜に出発し、バンクーバーの深夜に到着します。 トロントとバンクーバーには3時間の時差があるため、バンクーバーの深夜0時頃というとトロントの午前3時頃になります。 これは正直そんなに大変ではありません。 逆にバンクーバー発トロント行きはこれまたバンクーバーの夜遅く(午後11時過ぎ)に出発の便が多いです。 この時点で既にトロントでは日付が変わって午前2時半です。 そこから4時間ちょっとフライトし、トロントには午前7時前に朝日が上ってくるころに到着します。 これが結構辛い・・・。 英語では真夜中に飛ぶフライトのことを「Red-eye flight」と呼びます。 日本語では「目の隈便」と呼ぶそうですね。 

 Red-eyeをやって帰ってくるとかなりクタクタです。 人間が寝ていなければいけないはずの時間帯に無理やり身体を起こし、頭を使って仕事をし、本来であれば胃腸が休息を取る時間帯に変なものを食べたりするというのは身体には堪えます。 日本でもトラックの運転手さんや看護師さんなど、夜勤をする人はきっと大変なんだろうな〜と今さら思うようになりました。 どこででも寝れる人とか、いつでも寝れる人であればこの類の仕事には向いていると思いますが、僕は残念ながらそういう体質ではありません。 夜遅く出発の場合にはなるべく日中に昼寝をするように心がけてはいますが、それすら難しいこともあります。 幸い、仕事中に眠くなるということはなく、目はしっかりと冴えていますので仕事に影響はありませんが、まだまだ慣れていないこともあってか、red-eye後に家に戻ってくると、その日は一日あまりなにもできません。 先日も朝8時頃に帰宅し、そこからソファーに横たわって4時間ほど眠り、さらに午後からも数時間眠ってしまって、一日特に有益なことはできませんでした。 こういうことをずっとやっているときっと身体にはよくないと思います。 

 以前の会社ではred-eyeのようなフライトをすることなくセニオリティの階段をスムーズに上っていったため、こんなに苦しい思いをすることはありませんでした。 また、リザーブでもありませんでしたので、自分が好きなようにスケジュールを組むことができました。 もともと僕は早朝に強く、深夜に弱い体質なため、red-eyeのように遅くまで起きているのは苦手です。 むしろ、朝4時に起きて仕事をし、午後の早い時間に仕事を終えるようなスケジュールのほうが得意です。 ボーイング767に乗務している限りは今のようなスケジュールが続きそうでいろいろ悩むところでもあります。 

 機会があるたびに先輩パイロットに「どうやって時差ボケとかred-eye対策をしています?」と聞くことにしています。 なにかきっと秘訣があるはず!と思って聞きまわっていますが、「どうやったって疲れるのには変わりないよ」という人が多いです。 ず〜っと時差ボケや睡眠不足と戦うことになるのがこの仕事という人もいます。 

 それでも「ワイドボディ」のボーイング767に乗務できているのはラッキーなので、なるべく楽しむように心がけています。 もうしばらくはこのままワイドボディを飛ばし、どうしても健康面などの理由で不満があるのであれば、ナローボディーであるエアバス320などに移ることも検討しています。  ナローボディーであれば前の会社で飛ばしていたルートや飛行内容と近いため、体調管理もきっとやりやすいのでは?と思っています。 ただし、機材変更となると、また数ヶ月の訓練と勉強が待っています。 それはちょっとなぁ〜っていうのが今の本音です(苦笑)。

 ここからは先日のフライトでロサンゼルス、バンクーバー、ロンドンに行った時の写真をどうぞ。

 白い砂浜が広がるロングビーチ。

 遊歩道のようなものが整備されていて、そこを走るのが僕のいつものコースです。

 木々がとてもアメリカ西海岸らしいです。

 さすがメキシコ系が多い西海岸、タコスが美味しいです。

 こちらはバンクーバー。 ホテルからインナーハーバーとライオンズゲートブリッジがちょっと見えます。

 橋を渡ってキツラノ方面へ。 サイエンス・ワールドが見えます(丸い建物)。


 こちらはイギリス・ロンドン。 カーナビーという界隈には買い物をするショップが多くあります。

 ロンドン・ヒースロー空港内には人参型のプラントが植えられています。



(つづく)
 

2017-08-07

リザーブパイロットの生活。

 僕が今の会社に入った時、グランドスクールには30名のパイロットが呼ばれていました。 僕はその30人のうちで一番セニオリティ番号が低いパイロットでした。 

〜セニオリティ番号とは〜
 通常、会社に入社した日付に基づいて各社員に割り当てられる固有の番号で、この番号が小さければ小さいほどセニオリティが”高く”、いろいろな面でセニオリティが高い人(番号が小さい人=早く会社に入った人)のほうが優位な選択をすることができます。 例えば、毎年の休暇を決めるときなどにはセニオリティが高い人から順に希望を出すことができます。 


 グランドスクールの中盤で「どのベースでどの機材を飛ばすか」を決める日がありました。 決めるのはセニオリティ順です。 僕は一応形式上は希望を出しましたが、30人中30番目なので、結局は「残り物」が回ってくることになりました。 選択肢にあったのは

  • ボーイング787のRelief Pilot (通称RP)
  • ボーイング767(メインライン)の副操縦士(通称FO)
  • ボーイング767(レジャーエアライン)のFO
  • エアバス320/321/319のFO
  • エンブレア190のFO

という感じでした。 機材を選ぶにあたり、いろいろ考慮することがあります。 パイロットの中には「僕は(私は)とにかく大型機を飛ばしたい!」という人がいます。 大きい飛行機のほうが小さい飛行機よりもエラいんだという考えが少なからずあるからです。 ただし、大型機を飛ばすということは、同時に長距離を飛ぶということを意味します。 なぜなら、大型機を短距離路線で飛ばすのはコスト高になってしまうからです(日本のように、どうしても大型機でないと旅客数をさばけないという場合は別ですが )。 ということは、それだけ家を留守にする日数も多くなる場合があります。 はたまた、パイロットの中には「どんな飛行機でも良いけど、とにかく働く日数を少なくしたい」という人もいます。 特に家族がいたり、小さいお子さんがいる人の場合には仕事よりもプライベートを優先することが多いです。 他にも、「なるべくお給料が高い飛行機がいい」とか、「楽なフライトが多い飛行機がいい」とか、「ベースは〇〇がいい」とか。 本当にいろいろ選択肢があります。

 僕はというと、希望は787か767でした。 やっぱり一度は大きな飛行機を飛ばしてみたいというのが心の何処かにあったからです。 ベースはバンクーバーがいいな〜と思っていましたが、それは叶わず、結局トロントベースのボーイング767の副操縦士に落ち着きました。 

 今までは、大型機のFOになるには、まずはRP(=リリーフパイロット。 第3のパイロット)になり、そこで経験を積み、数年してからやっと副操縦士に昇格できるというのが通例だったそうです。 このRPですが、原則的に離着陸はさせてもらえません。 主な仕事はその名の通りリリーフで、機長・副操縦士の業務を一時的に替わることで機長・副操縦士にフライト中に休息を取ってもらうことが主な目的のパイロット職です。 一昔前まではRPは下積みパイロットのポジションで、そこで頑張ってようやく副操縦士に昇格し、やっと操縦桿を持って離着陸をやらせてもらえるという感じだったようです。 ところが今は物事の流れるスピードが変わり、RPをやらなくてもいきなり副操縦士にいけるようになりました。 僕が業務していると、機長やフライトアテンダントの人に「入社いきなり767のFO? あなた、ラッキーだね〜!」と言われることが多々あります。 その通りで、僕は本当にラッキーです。

 ここまではいい話ですが、あんまりよくないことももちろんあります。 それが今日の本題。 リザーブについてです。

〜リザーブパイロットとは〜
乗務するパイロットに病欠が出たり、もしくはスケジュールの急な変更などでどうしても追加要員が必要になった場合に駆り出されるパイロットのこと。 リザーブ勤務日は予め決められていますが、実際に電話で呼び出されるかは前日もしくは当日まで分かりません。

 僕はこのリザーブパイロットです。 理由は簡単。 一番セニオリティが低いパイロットだからです。 僕は現在、トロントベースの767パイロットの中でもっともセニオリティが低いパイロットです(えっへん笑)。 そのため、あまり誰もやりたがらないリザーブパイロットに充てがわれているわけです。 現在、767のFOではリザーブパイロットが4名ほどいます。 その一番下が僕。

 僕のスケジュールはだいたい4日勤務で3日お休みです。 これがときどき4日勤務で2日休みや、5日連勤で4連休などになることもあります。 

 リザーブ勤務日は原則的にいつ会社に呼ばれるかわかりません。 24時間待機ですが、それでは大変でしょうということで「サイレントアワー」というものが設けられていて、午後9時から午前5時までは原則的に電話はかかってこないことになっています。 それ以外はずっとリザーブです。 朝5時きっかりに電話がかかってくることもありますし、お昼過ぎに電話がなることもあります。

 電話がなって仕事に呼ばれると、原則的に2時間以内に空港に到着していなければいけません。 ということは、リザーブである時はあんまり遠くに出かけることはできないということです。 電話がなるまでどこかで自由に遊んでいてもいいけど、2時間以内には自宅に戻って着替え、荷物をまとめて空港のフライトプラニングルームに出頭しないといけません。 これに間に合わないと最悪の場合はフライトの出発が遅れ、お客さんに迷惑をかけることにもなりかねないので、結構気を使います。 とはいえ、僕が住んでいるのは空港から電車で30分以内の場所なので、よほどのことがない限りは仕事に遅れることはないと思っています。 交通事情の悪いトロントですが、僕は電車通勤なので、渋滞などを気にする必要もなし。 かなり助かっています。 たま〜に、フライト出発時間から2時間以内に電話がかかってきて、「ごめん、なるべく急いで。 間に合わなくてもしょうがないのはわかっているから、とりあえずベストを尽くして!!」という電話で呼ばれることもあります(笑)。

 僕が副操縦士としてチェックアウトした当初は3週間ほどコールがなく、ずっと家で待機していました。 これは心理的にしんどかったです。 せっかくチェックアウトしたのだから飛びに行きたいとも思いますし、そもそも飛行機のことをまだまだ実際に操縦して学んでいかなければいけないのにその機会をもらえないというのはとてももどかしいものでした。 それから時間が経ち、今はリザーブの日のおおよそ6〜7割はコールがあります。 これで月に12〜13日くらい働いている感じで、これよりも少ないときもあります。 どこに飛ぶのか、誰と飛ぶのか、そしてどのくらい家を留守にするのかが分からないのはちょっと困ることがあります。 例えば、せっかく新鮮な野菜やフルーツをたくさん買ったのに、しばらく家を空けなければいけないとなると、自宅に戻るころには野菜がちょっとしなっとなっていることもあります(笑)。 

 一方で、リザーブパイロットをやっていると普段はいけないようなところに行けたりもします。 セニオリティが高いパイロットが担当するはずだった「おいしいフライト」を、そのパイロットが病欠などで休みになったりすると代わりに担当することもあるからです。 こういう理由で、わざわざリザーブパイロットを自主的にリクエストする人もいるくらいです。 

 多くのエアラインでは入社しばらくは生活環境や仕事環境があまりよろしくないこともあります。 しかし、時間が経ち、セニオリティが上がっていくにつれてそれらは向上し、いろいろと希望が通るようになります。 その域に到達するのに何年かかるかはいろんな事情が絡んでくるので一概には言えませんが、ほぼ間違いなく向上します。  それがセニオリティ制度のよいところだと思います。

 今回はリザーブについて少し書いてみました。 


(つづく)
 

 

 
 

2017-07-31

ペリカンと飛んでます。

 最近になって仕事道具を運ぶためのフライトバッグを新調しました。 フライトバッグ、またはフライトケースなどとも呼ばれるパイロットが持ち歩く鞄は会社によっては支給されるところもあるみたいです(国内の大手航空会社など)が、僕が働く会社では基本的に自由に好きなものを使えます(いくつか制約があります)。 以前僕が使っていたのは安価なこれ↓

 飛行機によっては操縦席の窓沿いにフライトバッグを入れるための穴があります。 その穴に収まるサイズでないといけないのですが、このバッグはDH8, CRJともに大丈夫だったので重宝しました。 また、以前はアプローチプレートや会社のマニュアルなどの電話帳ほどの厚みがあるバインダーを3〜4つも常時持ち歩かなければいけなかったので、このバッグの大きさは大変役立ちました。 しかし、最近ではそれらのマニュアルのデジタル化が進み、今はiPad一つで済みます。 なので、このようなカバンでは中が空っぽで、あんまり意味がありません。 また、3年ほどの仕様でだいぶボロボロの場所も出てきましたので、思い切って新しいバッグに移行しました。

 今回選んだのがこちら↓

 カメラやドローン、軍事兵器などを運ぶために人気のハードケース「ペリカンケース」の1430というモデルです。 特徴はトップローディング(蓋が上に開く)であることと、防水、耐衝撃性、そして高い機密性などがあります。 天気が悪い日にも最寄りの駅まで歩いて通わないといけない電車通勤のため、防水性能はとても気に入っています。 重さは以前のカバンと同じくらいで気になりませんし、とにかく頑丈にできています。 中の仕切りなどは僕の用途に合わないため、いろいろカスタムしています。 
 色はシンプルな黒で、ハンドルにはラバーが貼ってあるので持ちやすいです。 これをオーバーナイトバッグに引っ掛けて運びます。

  蓋裏側にはCocoonという会社が製造するGRID-IT!というオーガナイザーをネジ止めしてあります。 これによっていつもフライトで使う小道具を蓋裏に留めておくことが可能で、取り出し・収納も楽々です。 ちなみに左側から、ハンドワイプ(お手拭き)、フラッシュライト、iPadのチャージャーとケーブル、スペアのペン、チューインガムを入れています。

  中はこんな感じです。 左上にはライセンスやパスポートなどが入った書類ポーチとヘッドセットポーチ、右上にはメガネ、サングラス、海外滞在用の財布、メモ用紙等、そして下には会社支給のiPadとクリップボードが入っています。 また、見えにくいですが、右端には海外ルートを飛ぶ時に必要なプロッティングチャート(航空図)、下端には税関申告書類の入ったフォルダも入っています。

 ボーイング767に乗務するようになって、カバンに入れるものにも少し変化がうまれました。 それらがこちら↓

  最近では767は縮小計画のために海外路線を飛ぶことが減ってきたのですが、それでもイギリスのロンドンに行くことがあります。 そうなるとレイオーバー中の食事や買い物、運転手へのチップなどでイギリスの通貨(ポンド)が必要になります。 また、日本に行く場合にも円が必要になりますし、ヨーロッパだとユーロが必要ということもあります。 今でもアメリカには比較的良く飛びますので、アメリカドルも必要です。 そのため、僕はダイソーで買った小さなメッシュ袋にそれぞれの国の通貨を小分けして管理しています。

海外に行って困るのは電圧・電源プラグの違いです。 幸い767にはiPadをフライト中に充電できるようにUSBポートアダプタが配備されていますが、個人的な携帯の充電などは禁止されています。 そのため、滞在先のホテルで携帯を充電するためにはアダプタが必要になりますので、このマルチアダプタをバッグの中にいつも入れています。
 このようにはめ合わせると小さいブロックになり、これでバッグ内でも場所を取りません。

 
  もちろんバッグには767のステッカーを貼ってあります(笑)。

 このバッグを持っていると、一緒に飛ぶ機長達にほぼ毎回「なにそれ?」って聞かれます。  普通のバッグとちょっと形が違うから興味を持たれるみたいです。 このバッグは本当に万能で、車に引かれても壊れないほど強靭にできているため、自宅では踏み台として役に立つこともあります。

 以上、バッグのご紹介でした〜!


(つづく)
 

2017-07-06

リトル・ベネチア。

 先日、またロンドンへのフライトがありました。 今回はトロントからハリファックスまで飛んで、そこからロンドン・ヒースロー空港へのフライトで、帰りはロンドンからオタワまでのフライトで、オタワからトロントまではデッドヘットという感じでした。 

 ハリファックスからロンドンまでのフライトは5時間ちょっとと、それほど長くはありません。 ただ、ハリファックスを出発するのがトロント時間のちょうど真夜中くらいで、夜通し飛んで、ロンドンに到着するころにはトロント時間で午前5時過ぎくらいになります。 これがロンドン時間だと午前10時頃。 もうなにがなんやらわかりません(笑)。

 ロンドンからオタワは結構長くて、約7時間のフライトです。 そもそもオタワはハリファックスよりも西に位置し、さらに西向きのフライトになると偏西風のせいで向かい風で飛ぶのがほとんどです。 そのため、飛行時間が長くなります。 この7時間のフライトがが結構きつい・・・(苦笑)。 いっそのことフライト時間がもっと長くなれば規定に則って「オーグメントパイロット」という3人目のパイロットが乗務することになります。

 このオーグメント(augment)とは「増大させる」という意味の言葉で、文字通り、「飛行可能な時間・距離を増大させるためのクルー」という意味になりますでしょうか。 飛行時間が10時間を超えるようなフライトになると必ずオーグメント、または、リリーフパイロットという3人目・4人目のパイロットが乗務し、フライトの途中で交代しながら休憩・仮眠を取ります。 こうでもしないと到達できないところがあるんですね。 例えばトロントから中国へのフライトなどは飛行時間が軽く10時間を越えますから、これを二人だけのクルーで飛んでいるとそもそも法的に乗務できない場合が出てきます(一度に乗務できる時間は制限されていますので)。 

 なにはともあれ、今回のロンドンまでのフライトもいつもどおりスムーズに行きました。 相変わらずイギリス英語の航空無線に苦労させられることもありますが、3度目ともなるとだいぶ慣れてきました。 何事も慣れですね、本当に。 ロンドンは毎回どこかでホールド(空中待機)させられます。 我々がロンドンに到着するころに、同じようにロンドンの空域に入ってくる航空機の数が多すぎて管制官がさばききれなくなるので、どこかで空中待機をさせられます。 今のところ毎回オッカムという場所にある航空無線標識局の上でぐるぐる〜っと旋回させられます。 だいたい時間にして10〜15分ほど。 そして我々の着陸の順番が来るとレーダーベクターとスピード制限で細かくコントロールされ、最終的に着陸ということになります。 ロンドン空港は独特なあるあるが結構あります。 これはまた次回にでも。

 今回のレイオーバーでもいろんなところに足を運びました。 まずはオールドボンド通りなどの商店街を通ってイギリスで有名な靴屋さんを何件か回りました。 ちょうど今はセールの時期なので、いたるところでバーゲンをやっていました。 僕は結局なにも買いませんでしたが、イギリスの昔からの職人が作る革靴というのはとても魅力的で、お店に入るとレザーの匂いに圧倒されます。 そういう体験ができるのも実際にロンドンに行ったからこそ。 良い体験をしました。 それからはピカデリーサーカスやオクスフォードサーカスといった有名な通りを歩きました。 翌日にはランニングで運河沿いに散策してみました。 

 グーグルマップを見ていて気付いたのですが、ロンドンには「リトル・ベネチア」という場所があります。 運河が交わり、ボートハウスなどがあってなかなか雰囲気が良いです。 カナダに帰る数時間前にここを走ってきました。 ワイドボディのパイロットになって海外に来ることが増え、こういう貴重な経験をレイオーバー中にできることがなかなか楽しいです。 時差ボケや夜中中フライトするなど辛いこともありますが、それでもナローボディーで国内を飛んでいるのとは違った楽しみがあると思います。

 では今回のレイオーバーの様子を写真でどうぞ。
 
 ハリファックスで出発前に食べた夕食。 ラザニアでした。

ロンドンのイーストエンド。 テロなどがあったせいか、至る所に「ロンドンはすべての人々を歓迎します」的なメッセージが掲げられていました。 日本語でようこそって書いてあるのもちょっとおちゃめ。

ピカデリー・サーカスと2階建てバス

リトルベネチアにつながる運河とボートハウス。 ボートハウスには実際に人が住んでいて、船の外でモーニングティーを飲んでいる人を見かけることもあります。

リトルベネチア。 船のクルーズなどがあるみたいです。


 ロンドンを出発し、7時間ほどのフライトを経てオタワに到着しました。 それから税関審査・入国審査を経て、30分後にはトロント行きのデッドヘットフライトに乗っていました。 予定では2時間ほど後のフライトでトロントまでデッドヘットの予定でしたが、うまいこと早い便に乗ることができました。 こういうのはベテランパイロットが良く知っています。 今回も一緒に飛んでいた機長がいろいろ知っている人で、「2本早いフライトで帰るぞ!」って意気込んでいて、見事に早い便に乗ることができました。 一般の乗客として旅行していたら30分で入国審査や身体検査場を通過するのはほぼ不可能です。 我々はクルーバイパスと呼ばれる空港で働く職員などが通る特別な入り口を通るので圧倒的に早く身体検査などを通過することができます。

 

(つづく)

2017-06-16

ロンドン・ロサンゼルス。

 先日、ロンドン行きのフライトに乗務しました。 767はロンドンへは直接飛ばす、一度ハリファックスを経由します。 そこからロンドンへは6時間弱のフライトです。 トロントを出たのが午後6時過ぎ。 ハリファックスまでは約2時間のフライト。 ハリファックスを出発してロンドンへのフライトは夜中のフライトということになります。 

 ロンドンへ行くのは今回が2回目です。 前回は僕のラインチェックでした。 ラインチェックというのは、フライトテストが終わり、型式証明を取得した後に実際のフライトを通して行うLine indocの最終段階に行われるテストです。 一緒に飛ぶのはラインチェックキャプテンで、フライト中にいろいろ質問をされます。 実際の乗務を通じてちゃんとオペレーションを理解しているか、必須事項をちゃんと理解しているかを試すテストです。 僕のラインチェックは4月でしたので、今回のフライトはそれからだいぶ経っています。

 前回ロンドンに行った時はPM(Pilot Monitoring)でした。 操縦はキャプテンがして、僕は無線やその他の業務を担当していました。 ですが、今回は僕がPF(Pilot Flying)。 実際にハリファックスを離陸し、ロンドンでの着陸までを僕が操縦しました。 

 ロンドンですが、英語の訛りが強く、また、いろいろな独特の言い回しがあり、理解するだけでも最初は大変です。 ロンドンヒースロー空港は大変忙しい空港で、毎回ほぼ間違いなくホールドさせられます。 スピード制限も毎回されますし、なかなか大変な空港という印象です。 でも、今回は2回目ということもあり、前回とは違ってだいぶ落ち着いて対処できました。 操縦も我ながらそこそこ上手く行き、満足のいくフライトが出来て嬉しく思いました。

 ロンドンのレイオーバーは約24時間。 まずはホテルにチェックインした後はシャワー、そして数時間の昼寝をします。 カナダ時間で夜中中乗務したことになるので、身体は結構クタクタです。 昼寝の後は街を散策します。 今回はランニングウェアを持ってくるのを忘れてしまったので、ホテル近くにあるCamdenという街まで運河沿いに歩くことにしました。





 (写真上:到着ゲートのお隣は超大型機ばかり)

(写真上:ヒースロー空港外にあるエミレーツのエアバス380型機の縮小版)
 
  
(写真上:ホテルからCamdenまでの運河沿いの散歩道)
 
(写真上:運河ではカヤック教室もやっているようです)
 
 (写真上:運河沿いは散歩道になっていて、多くの人が歩いています)
 
(写真上:運河にはボートハウスが多く停留しています)
 
(写真上:Camdenはマーケットが開催されていて、多くの人で賑わっていました)
 
 
(写真上:いろんな食べ物を販売していて大盛況です)  

  
(写真上:真ん中にはコンコルドが駐機されているのが見えました)


 ロンドンを出発し、ハリファックスへ向けてフライトしました。 天候もよく、出発前はちょっと待たされましたが、その他は極めて順調でした。 ハリファックスに到着し、ここで一泊しました。 ここでもレイオーバーは24時間ほどだったため、街を散策しました。 ここに来るのは以前の会社の時のレイオーバー以来で、1年以上前だったように思います。

(写真上:東海岸らしい家並みです)

 (写真上:Prince of Wales Towerという要塞のようなところに行きました)

 レイオーバー中には機長と一緒に食事にいったり、散歩をしたり、充実した時間を過ごしました。 そして翌日にはトロントに戻りました。

 ところが、トロントに向けて離陸してしばらくしたところでCrew Schedulerからメッセージが届きました。 「トロントに着いたらそのままバンクーバーに行ってね」っていう内容でした。 トロントに着いたら3連休だったので、「え〜?!」って思ったのですがリザーブパイロットなので仕方ありません。 はいはい、と了解したのですが、その後、また連絡が来まして、「ごめん、さっきのメッセージはなかったことにして。 今度はLAまで飛んでね」っていうメッセージでした。 トロントに着陸後、2時間後にはロサンゼルス行きの便に乗務していました。 リザーブパイロット、なにが起こるかわかりません(苦笑)。

 ロスに行くのは今回が初めてでした。 キャプテンも新米キャプテンで、ロスに行ったことがあるのは数回、しかも最後に行ったのは1年以上前ということで、フライト中にはルートマニュアルという会社が作成しているマニュアルを見て勉強しました。 天気もよく、気持ちの良いフライトになりました。 LAは忙しい空港でしたが、思ったよりもスムーズに進み、なにも問題なくゲートに到着。 なかなか楽しいフライトでした!

 ロスでのレイオーバーは30時間! いろんなところを歩いて回りました。 

(写真上:さすがロス、ヤシの木が生えていて、空が青く、常夏です)

   
(写真上:Queen Maryという客船を観に行きました)


(写真上:新婚さんいらっしゃい!でもおなじみ、ロングビーチです)

(写真上:ロングビーチにはサイクリングロードや歩行者専用路が完備されています)

 最初は2泊3日の予定で仕事にいきましたが、家に戻ってこれたのは5日後になりました。 これからは下着や替えの服をもうちょっと持っていこうと思ったのでした・・・。


(つづく)























2017-06-05

転職後初めての休暇と、バンクーバーへのフライト。

 1月後半から訓練を始め、なんやかんやとバタバタと訓練やら仕事をしてきましたが、5月の後半に1週間の有給休暇をもらえましたので、いろんなところを観光してきました。 今回は主に写真でどうぞ。


 (トロント島クルーズから見るトロント・ダウンタウンの風景)

 (ナイアガラの滝)

(カナダ唯一のMLBチームであるトロント・ブルージェイズの試合を観に行きました。 この日の対戦相手はテキサス・レンジャーズで、投手はダルビッシュでした!)
 
 (ニューヨーク・タイムズスクエア)

 (マンハッタン島)

 (自由の女神像)


 休暇が終わり、昨日までバンクーバーへのフライトでした。 夕方にトロントを出発し、バンクーバーに到着したのも夕方。 フライトは約5時間ですが、時差が3時間あるため、夕方6時に出発したのにバンクーバーに到着したのが8時くらいです。 変な感じがします。 インナーハーバー近くのホテルにチェックインしたあとはロブソン通りのラーメン屋に行って来ました。 翌日は丸一日お休みだったので、スタンレーパークにランニングに行って来ました。 そのときの写真がこちら。
 


 走り出したときは5〜7キロくらい走ればいいやと思っていたのですが、スタンレーパークの海岸線を走っていたら、いつのまにか12キロほど走っていました。 おかげで次の日は足がかなり重かったです。 ランニング後はちょっとだけ買い物をし、お昼ごはんは元生徒で今は僕が以前勤めていた会社でエアラインパイロットをやっている友達に会いました。 それから休憩をし、バンクーバーを出発したのが日付が変わって深夜0時25分。 夜中中フライトをし、トロントに戻ってきたのが午前7時過ぎでした。 家に戻ってきてシャワー、昼寝をし、夕方からは教官時代の元同僚と幾つかのバーやレストランをハシゴしてきました。 いろんなところに友人がいるのはありがたいです。

 今日から4連休で、今日は運転免許証の書き換え(アルバータ州免許からオンタリオ州免許)に行って来ました。 今住んでいるところはダウンタウン中心部からでも歩いて1時間ほどです。 車を手放してからというもの、休みの日には平均10キロ近く歩いています。 歩数も2万歩とかになります。 健康的な生活をしている気がします(笑)。


(つづく)



 

2017-05-15

ボーイング767。

 今日は僕が乗務しているボーイング767型機についてちょっとだけ。 主には以前乗務していた機材との比較になります。 それではどうぞ。

 ウィキペディアによれば、ボーイング767は「セミワイドボディ」という分類に入るそうです。 正直、この呼び方はウィキペディアを見て始めて知りました。 一般的は767は「ワイドボディ」と呼ばれることが多く、実際、フライト中にも無線では「コールサイン+"heavy"」と名乗ります。 

 ワイドボディの反対はナローボディで、違いは機内に通路が1本しかないか、2本あるかというので分類されているようです。 例えば、ボーイング737型機やエアバス320型機は客室内に通路が1本しかないので「ナローボディ」、一方、ボーイング777や787は通路が2本ありますので「ワイドボディ」と呼ばれます。 

 コクピット内には監査官などが座るための「ジャンプシート」が2席あります。 機長、副操縦士、監査官2名の最大4名がコクピットに座ることができます。 コクピット内は普通に立っても頭をぶつけることがないくらい天井が高いです(ただ、先頭に向かってスロープしているので、操縦席付近は当然ながら低いです)。

 客室内の座席数は211席です。 これは会社やオペレーションによって座席アレンジが異なります。 僕が働く会社でも、211席の767もあれば、282席の767もあります。 また、僕が飛ばす機体には前方にJ Class seat、いわゆるビジネスクラス席があります。 ビジネスクラス席は座面がフルフラットになり、各席がブースで囲まれていますのでかなり快適なフライトができます。 

 翼は約47メートルで、僕が飛ばす機体にはウィングレットがありません。 これだけ広い翼ですが、操縦席の窓からは一切見えません。 したがって、出発前には有る一定の外気温以下の場合には客席内の翼が見える座席の窓から翼の状態を確認します。 冬季や気温が低い時期には着氷や積雪があったりし、その場合にはde-ice作業をしてからの出発となります。 幸い、僕が訓練を終えたのはもう春先だったため、訓練以外でde-iceベイに行ったことはありません(笑)。

 一般的には毎フライト前にウォークアラウンド(出発前点検)をします。 安全ベストを来て外に出て、飛行機の周りを歩いて機体にダメージがないか、取れているパネルがないか、油圧系統からの液漏れがないか、タイヤのコンディションはどうか、エンジン内のファンブレードにダメージがないか等々を目視確認します。 767ではウォークアラウンドはほとんどしません。 というのも、特に海外へのフライトの場合にはメンテナンスの人たちがpre-departure check(PDC)という点検をすることが義務付けられているため、この作業の間にウォークアラウンドもやってくれているからです。 実際、僕が外に出てウォークアラウンドをしたのは訓練中を含め二度だけです。 

 今まで飛ばしていた飛行機はどれも胴体が地上に近く、機体の下をくぐるにはだいぶ身を屈めないといけませんでした。 767の場合は胴体下を歩いても頭はどこにもぶつかりません。 外からコクピットを見上げるとものすごく高いところにあることがわかります。 今でもコクピットからの眺めはとても高く感じます。

 767の操縦席の窓は大きく開けることができます。 ハンドルをこきこきを回すと窓枠がスライドし、身体を乗り出すのに十分な空間ができます。 万が一の緊急時にはここからロープを使って脱出します。 これだけ高い窓から外に下りるにはかなりの勇気がいると思います(汗)。

 とにかく重いです(笑)。 最大離陸重量は180トン以上です。 燃料だけでも70トン以上入ります。 CRJ-705の最大離陸重量は40トンほどだったことを考えると767は圧倒的に重いです。

 オートスロットル装置が備わっていますので、コンピューターが自動でエンジン出力を調整してくれます。 手動で操作したり、オートスロットルをオーバーライドすることもありますが、巡航中にはほぼ100%オートスロットルがプログラムされた巡航速度を保つように出力調整します。 これのおかげで巡航はだいぶ楽です。 CRJにはオートスロットルはなかったため、巡航中は常にスラストレバーをちょこちょこといじってスピード調整をしていました。 山岳地帯上空を飛ぶ時には「マウンテンウェイブ」と呼ばれる乱気流の波が起きることがあるのですが、その中を飛ぶときなどは手動スラストではなかなか大変でした。 オートスロットルも万能ではないので結局はパイロットがコントロールしますが、それでもだいたいの場合にはオートスロットルの自動制御で十分事足ります。 そしてスラストレバーはめちゃくちゃデカいです(笑)。 教官いわく、「男のスラストレバー」だそうです(女性差別の意図はいささかもありませんのでご了承ください)。

 なにせ80年代に製造が始まった機体ですのでいろんなところが古いです。 コクピット内の照明、パネルのカラーリングなど、ちょっとしたところに昭和の香りがします(カナダなので昭和ではないかもしれませんが・・・)。 そういった意味ではDash8と似ている感じがします。 CRJは90年代の飛行機だったため、モダンな印象を受けました。

 コクピット内でのクルー同士の会話は肉声です。 今まではヘッドセットをして、インターコムで話しをしていました。 767にはインターコムはあるのはあるのですが、フライト中にはほとんど使うことはありません。 というのも、自分の声を隣にいるパイロットのヘッドセットに流すには毎回発信の度に発信ボタンを押しながらしゃべらないといけないからです。 これは面倒臭い。 したがって、酸素マスクを装着するとき以外は基本的にはマイクを通さずに話をします。 コクピット内は比較的静かですが、機長の中には超ソフトな小声で話す人もいて、そういう人との会話は難儀します(笑)。

 以上が僕がこれまで乗務してきて感じた感想の一部です。 767はなかなか面白い飛行機で、今のところとても気に入っています。


(つづく)