2015-06-30

フライトバッグ。

 パイロットが通常の運航で使う道具を入れるためのかばんを「フライトバッグ」とか、「フライトケース」と呼びます。 だいたいの場合が長方形のかばんで、革製のものが多いです。 エアラインパイロットになったらいつかは一つ欲しいなぁとずっと思っていました。 

 実際、エアラインパイロットが持っているかばんを見ると、普通のラップトップケースを使ったり、中にはバックパックを使っている破天荒なパイロットもちらほら見かけます(笑)。 もちろん本皮製の使い込まれたバッグを使っているベテランパイロットも多いです。 ボーイングやエアバスといった飛行機のステッカーを貼ってカスタムしているパイロットも結構います。 中には訳の分からない、飛行機やエアラインとはまったく関係のないステッカーをベタベタ張っている方々もみかけます(苦笑)。 

 僕は今までずっとローラーが付いた一般的な旅行かばんを使っていました。 それはそれでポケットもたくさんあるし、軽いし、ローラーとハンドルもあるので便利だったんですが、日々の仕事で酷使したためかジッパーが逝かれてしまい、いよいよ買い替えをしないといけないことになりました。 

 偶然、同じ会社で働いている先輩FOが僕が前から気になっていたフライトバッグを売りに出していることを知り、中古品ということで割安で譲ってもらいました。 それがこれです↓

 






 本当は本皮製の一生ものを買おうと思ってずっと悩んでいたんですが、一生使える品質のかばんになると5万円以上もしますし、そもそもカナダではなかなか買えません。 アメリカからの輸入になるので関税や送料もかかります。 また、雨や雪にさらされることが多い季節もあるので、革にとってはよくない環境で酷使することになります。 また、いずれは今みたいに分厚いバインダーを何冊も持ち歩かなくてもよくなる日が来るようですので、そうなると大きなカバンは不要になるかもしれません。 とはいえ、ステッカーなどを貼ることができるのはかっこいいなとは思ったんですが、結局いろいろ考えた末、革製のバッグは諦めました。 

 今回買ったバッグはコンポジット素材で、外側をバリスティックナイロンで覆ってあります(なので残念ながらステッカーチューンはできません・・・)。 持ち手ストラップが両側にあり、かなり頑丈に出来ています。 ピアノヒンジで蓋が開閉するので便利です。 蓋部分にもポケットがあって便利です。

 よく、「パイロットのかばんの中には何が入っているの?」なんて興味を持つ人がいるようですが、本当にそんなことに興味があるの?という気がしてなりません。 まっ、本当に知りたいのであれば僕の場合は写真三枚目のような感じです。 アプローチプレートが入ったバインダーが2冊、ヘッドセット、機体の点検の際に着るセーフティーベスト、メガネ(予備)、サングラス、懐中電灯、免許証やパスポートの類、書類が入ったファイル、などなどです。  これがぜんぶ入るとずっしりと重いです・・・。 近い将来、バインダー類がiPadなどのいわゆるEFB(Electronic Flight Bag)にとって代わられるそうで、そうなると一気にかばんもだいぶ軽くなると思います。 

 まだこのかばんを使い始めて数日ですが、使いやすいですし、旅行かばんよりはパイロットらしいかな〜と思って、結構気に入っています。 まあ、使いやすくて長持ちさえしてくれればどんなんでも別に構わないんですけどね。

 昨日まで休日出勤も含めて9日間連続で家を留守にしていました。 今朝早い便でビクトリアに戻ってきました。 ここ最近、どこにいっても気温が高く、夏本番という感じです。 今日から4連休。 しばらくだらだらしようと思います。 


(つづく)


 

2015-06-18

いつものパターン。

 だいぶカナダも夏っぽくなってきました。 下の写真は今日のバルコニーからの眺めです。 前の通りは「アンティーク・ロゥ(アンティーク通り)」と呼ばれる通りで、ビクトリアのガイドブックなどにはよく出てくる有名なストリートです。 遠くにはアメリカ・ワシントン州のオリンピック山脈も見えます。 半袖でも気持ち良い気温です。 先ほどまでサイクリングをしてきました。 アームウォーマーもレッグウォーマーも要らないので気軽にサイクリングできて嬉しいです。


 今日は3日連休の1日目でビクトリアにいます。 昨日まで6連勤で、仕事が終わってからすぐにビクトリア行きの飛行機に乗って帰ってきました。 

 いつも通勤の際には他社便を使っています。 ほとんどの場合、某W社のフライトでビクトリアとカルガリーの間を通勤しています(フライト時間はだいたい1時間強)。 僕が働いている会社とW社の間には「reciprocal jump seat agreement」という相互ジャンプシートの取り決めがあり、お互いの会社が運航しているフライトに空席があれば格安で乗れるということになっています。 

 「ジャンプシート」っていうのは、コクピット内にある、主に監査パイロットなどが座って機長・副操縦士の運航を監査する場合などに使われる折りたたみ式の椅子のことです。自社便の場合には、客席が満席の場合にはコクピット内の「ジャンプシート」に座ることもありますが、他社便の場合にはだいたいの場合はコクピット内に座ることは安全上・規則上の理由で禁止されており、その場合には通常の乗客と同じように客席に座ります。 この取り決めの恩恵を受け、ビクトリアーカルガリー間を毎月3〜4回行き来しています。 格安とはいえ、一応お金がかかるので、これがコミューター(通勤族)にとってはつらいところですが、その代わり、ベース空港の近くに引っ越す必要がないし、お休みのときには自宅に戻ってこれるので、それが言ってみればバカンスのような感じでもあるので、今のところは苦になっていません。 パイロットや客室乗務員の中には海外に自宅を持っていて、そこから通勤してくる強者もいるようです。 

 昨日まで3連勤で、機長は初めて一緒に飛ぶ機長でした。 そうなると、当然ながら自己紹介から始まるのですが、僕の場合はまずは名前でトラブります。 僕はこちらでは苗字で読んでもらうようにしています。 理由は、前の職場でも外国人の教授などから僕の苗字(コイデ)で読んでもらっていたので、名前(ヤスヒロ)で呼ばれることには抵抗があることと、日本の場合は通常苗字で呼ばれますよね? あと、コイデのほうがヤスヒロよりも短くて覚えやすいかな〜っていうふうに思って。 なので、こちらではコイデと名乗ることにしています。 そうすると、だいたいのカナダ人に「どうも、僕の名前はコイデです」っていうと、ほとんどの場合には「は?なに?」って聞き返されます。 どうも英語が母国語の人には「コイデ」っていう響きが聞き取りにくいみたいで、だいたい追加説明が必要になります。 「あのぅ、魚の鯉と同じ、コイ・デです」っていうと、「あ〜なるほど〜」って言われます(笑)。 そして、そこからいろいろ聞かれます。 聞かれる内容は毎回だいたい同じパターンで、
  • どこから来たの?
  • 日本のどこから?
  • あれ、もしかして、「コイデ」ってファーストネームじゃなくて、ラストネーム?
  • どうしてラストネームで名乗るの?
  • 日本のどこから来たの?
  • etc...
  という感じです。 日本のどこから来たの?っていう質問がなかなか困ります。 「福井県です」っていっても、「はぁ?」って言われるのが99.999%です。 そりゃそうです、カナダ人が知っている日本という国は「Tokyo」と「Kioto」がほとんどです。 なので、毎回、「福井はキオト(京都)から電車で北東に2時間くらいのところにある都市です」っていう説明をしなければいけません。 これが毎回となると結構面倒臭いです。 いっその事、

 「どうも、僕の名前はマイケルです。 日本の東京から来ました。」

 って言えたらいかに楽か、って毎回思います(笑)。 まぁ、それでも、これが僕の個性であり、僕が僕たる理由だと思うので、これからも一生懸命説明を続けようと思います。

 
(つづく)

2015-06-01

今年2度目の一時帰国。

 5月22日から30日までの間、今年2回目の一時帰国をしました。 今回は嫁さんなしで、単身での一時帰国です。 22日の朝にビクトリアを出発し、バンクーバー経由で今回は大阪・関西国際空港に行きました。 

 僕が2006年にカナダに渡って来た頃にはまだエアカナダの関空ーバンクーバー直通便があったのですが、それから数年してその路線が休止になりました。 それからは日本に行くなら成田空港経由でしか日本には帰れないようになりました。 ところが今月からエアカナダのレジャー航空会社としての位置づけで、主にはバケーションの目的地になるようなところに飛んでいるエアカナダ・ルージュ(Air Canada rouge)がバンクーバーー関空間を飛ぶようになりました。
 
 

(上:Air Canada rougeの機体 機材はB767型機)

 このルージュ、聞いた話ではなるべく安価に旅行したい人のためにシートピッチ(間隔)を狭く設定しているようで、カナダ人の中には「前席に膝があたるくらい狭い」っていう人もいるくらいです。 僕は大柄でもない短足日本人ですのでそんな問題はなく、いたって快適でした。

(上:膝にはまだ余裕がある感じで不満はなかった)

 ルージュは、パイロットはエアカナダのパイロットですが、客室乗務員はすべてルージュの客室乗務員で、初期訓練はディズニーで受けているらしく、なんだか身なりとかキャビン内でのサービスの“ノリ”みたいなのがそんな感じだな〜っていう印象を受けました。 好き嫌いは別れると思います。 客室乗務員は全員名札をつけているのですが、その名札のフォントがディズニーらしいというか、なんというか、ちょっとファンキーな感じでのフォントで、僕はちょっと嫌でしたけど(笑)。

 それはさておき、今回も社員パスを使わせてもらっての帰国でした。 ビクトリアからバンクーバーはぎりぎり乗れたという感じでしたが、バンクーバーから関空まではだいたい半分くらいが空席で、おかげで隣には誰も座っていなくてすごく快適でした。 飛行時間は10時間ちょっとくらい。 自分の持っているスマホやiPadなどで機内エンターテイメントサービスの閲覧ができます。 これはなかなか画期的だなと思いました。 そのため、座席にはテレビ画面がありません。 お年寄りとか年配の方でスマホなんか持っていないとか、「wi-fi」っていわれてもよくわからない旅行者の方には少し厳しいかと思いますが、まあこれは時代の流れのような気もします。 実際、自分の端末で好きなようにテレビや映画が見れるのは「アリ」だなぁと思いました。 端末がない人のためにiPadの有料貸出もしていました。 

 関空到着後、そのまま実家の福井に帰りました。 それから数日間、実家でだらだら。 時差ボケも2日目にはだいぶよくなり、兄の娘とも少しですが遊んでやることができました。  久しぶりに近所の公園で逆上がりができるところをかっこつけて見せようとしたら首が攣りました。 それが今でも痛いんです(涙)。 地元のショッピングセンターにも行きました。 福井は田舎ですが、それなりに発展していて、生活に不便がないように感じます。 万が一、パイロットの仕事ができなくなって福井に帰ることになっても、とても便利な生活ができると思います。

 滞在3,4日目は叔父と叔母がそれぞれ遊びに来てくれ、いろいろなところに連れて行ってもらいました。 最近になって、自分が子供の頃に叔父・叔母と接した感じと、今、大人になってから接する感じはなにかと違うように感じるようになりました。 子供と大人というよりは、大人と大人という感じで話ができるのが新鮮です。 特に、自分の父親や祖父母の昔の話や、叔父や叔母の若かりし頃の話というのは、子供の頃の僕ではまず聞くことがなかったであろう内容だったり、聞いていたとしても理解できていなかったことが多かったであろうと思いますが、今はそういう話を聞くことができ、時代の流れを感じることが出来ますし、身内の過去についての知識を掘り下げることもできて、とても興味深く感じます。 なんというか、親族・身内の話を聞くことで自己が確立できるというか、アイデンティティーを見いだせるというか、なんかそういう感じの印象を受けています。 

 毎日天気がよく、気持ちが良かったです。 それにしても最近の日本は暑いです。 毎日最高気温は28度前後だったと思います。 叔母には車で海に連れて行ってもらいました。 懐かしい海岸線はとても綺麗でした。 子供の頃にはよく友達と釣りに行った砂浜も、今では狭く感じます。 次回はここで久しぶりに投釣りをしたいと思います。

 (上:三国サンセットビーチ)

 (上:雄嶋)

 (上:石川県にあるおしゃれな喫茶)

 実家での時間を楽しんだ後は大阪に一泊し、以前働いていた職場に久しぶりにお邪魔してきました。 元同僚の皆さんもお変わりなく、9年前に戻ったような錯覚に陥りました。 夜ご飯を一緒に食べることができ、久しぶりの昔話に花が咲きました。 あいにく、お世話になっていた元上司や同僚の方が海外出張だったので会えませんでした。 とても残念です。

 大阪では日本でやらなければいけなかった買い物などをし、ラーメンを食べたり、いろいろ楽しいこともできました。 JR大阪駅構内はだいぶ変わっていてびっくりしました。 次の日には関空からバンクーバー、そしてビクトリアに帰ってきました。 復路も半分くらいが空席で、快適な空の旅になりました。 ゴールデンウィークが終わったこの時期は天気も悪くないし、旅行客も多くないので日本への帰国にはもってこいだと思います。 これが桜の時期とか真夏になってしまうと旅行客や国内でも移動している人が多くて大変だと思います。 来年もこの時期に帰れたらいいかな〜なんて思います。

 今日、明日、明後日はまだお休みで、それから仕事再開です。 最初は3日間だけの連勤で、その後数日間休みです。 今年の休暇は一応これでおしまい。 またバリバリ働きます!


(つづく)